第６日第３試合で北陸（福井）との初戦を迎える慶応。再臨した聖地で日本一に挑むキーマンを紹介する。（藤江　広祐）

　今春の選抜大会初戦の仙台育英戦。１点を追う七回１死で代打として打席に立った慶応の加藤は、仙台育英のエース右腕高橋が放った初球の変化球を振り切った。

捉えたと思った打球は

　「捉えたと思った」。金属音を響かせ高々と舞い上がった打球はしかし、中堅手のグラブに収まった。直球だと思ってスイングしたボールが微妙に手元で曲がったという。「もう悔しい思いはしたくない」。その夜、宿舎の外で黙々とバットを振った。

　学生コーチの斎藤俊さんや親しみを込めて「藍太君」と呼ぶ先輩の延末にアドバイスを求めた。ゆっくりタイミングを取り無駄な力を入れない方法や直球を待ちながら変化球に対応するすべを、１４０キロ以上に設定した打撃マシンや置きティーなどを相手に体に染み込ませた。「思い立ったらすぐ行動する性格」と調子の良いチームメートがいればすぐに打撃のこつを質問した。

　神奈川大会の準決勝・東海大相模戦では最速１４８キロを誇る１年福田のカーブを強振して左翼スタンドへ２試合連続の２ラン。「真っすぐを待ちながら打ててうれしかった」と手応え十分にダイヤモンドを一周した。

　中学時代のボーイズチームでは主将を務めていた。大村のキャプテンシーからも多くを学ぶ。「先を読んでチームのことを一番に考え、結果も残せる」。そんな人間力の高さに間近で触れられる最後の夏でもあり、「秋につながるように大村さんの良いところを吸収したい」と目を光らせる。

　「藍太君たちに教えてもらいながら打撃を見直してきた。打点を大事に好機で打ちたい」。神奈川大会から延末と始めた打撃成績の競い合いは全国でも継続中。レギュラーを取り返して帰ってきた甲子園で借りを返す。（藤江　広祐）

　かとう・ゆうご　２年。右投げ右打ち。１７５センチ、７５キロ。栃木・陽西中（県央宇都宮ボーイズ）出身。