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【WEB記事】慶応主将・大村 宿敵との決勝「野球の神様が最高の舞台」(2023.08.21 神奈川新聞)

2023年08月30日

 「野球の神様が最高の舞台をくれた」。慶応の主将大村は試合後、そう言って決勝進出を喜んだ。

 ただの決勝進出ではない。相手は春の選抜初戦でタイブレークの末に敗れた仙台育英。その敗戦から慶応は「仙台育英の投手陣を打つため、仙台育英の打線を抑えるため」(大村)に、全ての基準を仙台育英に置いて練習を続けてきた。

 だからこそ、準決勝は負けられなかった。

 1点リードでどうしても追加点が欲しい六回。二塁打で出塁した渡辺憩を福井が犠打で送って1死三塁。打席の大村に1ボール1ストライクから出されたサインはスクイズ。低めの直球にバットを寝かせるもファウルとなった。

 森林監督が「何とか追加点が欲しかった。采配が良くなかった」と振り返った場面。だが大村は「三振する気は全然しなくて、すぐに切り替えられた。粘るのは得意なので」。1ボールを選んだ後、3球続けてカット。最後は甘く入った変化球を右前に運び貴重な2点目を挙げた。

 きれいなヒットでなくても1球を仕留める。それも仙台育英を想定して磨いてきた打撃だった。指揮官は「主将の適時打で勢いがついた。感謝している」と賛辞を惜しまなかった。

 あえて公言して掲げてきた「KEIO日本一」。その目標を手にする機会を「野球の神様」が整えてくれた。大村は言う。「やっとスタートラインに立てた。この試合のために今までやってきた」

 大会を通じて、応援の迫力は慶応がナンバーワン。ブラスバンドが、応援団が、アルプススタンドから空気を震わせる。「今年の甲子園は、自分たちのものなんじゃないかと思っている。決勝は楽しみでしかない」と大村。聖地の興奮を味方に付けて、笑顔で大一番に臨む。
(和城 信行)

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